オイレンシュピーゲルと謝肉祭の愚者 浅草サンバカーニヴァルと、ヨーロッパの謝肉祭の根っこは同じです。中世ドイツでも、冬の終わりにばか騒ぎと飽食をともなう祭が行われていました。現在もこの祭での蕩尽のために、せっせと働く人々がいます。みなが阿呆になるこの祭、中世の滑稽話に登場する道化の世界とも関連がありそうです。 オイレンシュピーゲルとは? 中世の伝説上のおどけ者だが、いまだ人気は衰えず、道化といえばまず思い出される人物。放浪の旅で職人や司祭、学者や医者などと偽って悪戯をし、欲や権威にとらわれている者たちをやりこめる話が有名です。活版印刷の発明から60年後、オイレンシュピーゲルの悪戯話をまとめた民衆本が出版されました。(1510年) 経済の停滞と頻発する争乱、カトリック教会への批判など中世末期から近世への過渡期の混乱した世相の中で、 「一休咄」のように機転や言葉遊びで、実在の人物とダブる高慢な相手の鼻をあかす滑稽話がうけました。 キーワードは、Narr Narrは、道化、愚者、阿呆、おどけ者などと訳される、ドイツ語圏の文化を理解する大事なキーワードです。オイレンシュピーゲルはNarrといわれていますが、ものごとの本質、相手の弱点を見抜く機知を備えています。中世の貴族や聖職者、富裕層は、余興の相手となり、遠慮せずに真実を述べるNarrを囲っていました。 |
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鈴のついた帽子をかぶり、異なった色の生地からできた服を着て、自分の顔がついた杖を持つ道化 |
ボッシュ「阿呆船」1490-1500年 船の上でバカ騒ぎをする人々に 後ろにいる道化が辟易している |
ベラスケス 「ラス・メニーナス」 1656年 右端に、宮廷の道化が描かれている |
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現代に引き継がれるNarrの世界 現代では、Narrはクラウンやピエロ、アルレッキーノなどと呼ばれ、主に演劇、演芸の世界で活躍しています。 もうひとつ大勢のNarrが天下をとる機会があります。ドイツ語圏では、アルプスの麓やライン川流域の町や村で、冬の終りの時期に大々的に行われる、春迎えの祭(謝肉祭、カーニバル)です。祭の期間は長い場合は1月6日から2月末、住民は祭の熱に浮かされます。特に最後の週は頂点に達し、仮装した人々が練り歩き、山車ではばか騒ぎが繰り広げられ、住民の失敗談などが公然と笑い草とされます。男が女に扮し、子供は老人の仮装、大人は子供の服を着て、医者はピエロとなり、誰もがおおっぴらに愚行を楽しみます。 |
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