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『養蜂と蜂蜜をめぐる話』 養蜂と蜂蜜 私達が口にするほとんどの蜂蜜は、セイヨウミツバチが集めたものです。密を集める能力の高さと飼育のしやすさから、日本でも、明治時代に導入されたセイヨウミツバチの養蜂が主流となっています。セイヨウミツバチの故郷であるヨーロッパでは、古代から森の木の洞に作られたミツバチの巣から蜂蜜を採取してきました。やがてミツバチが巣を作りたくなるような空洞を森の木に彫ったり、中をくり抜いた丸太を庭先に並べたりして、ミツバチを家畜として飼育するようになりました。貴重な甘味料であり薬でもあった蜂蜜を得るためだけではなく、蜂の巣からとれる蜜蝋が教会や裕福な家の照明に欠かせなかったからです。礼拝時の教会は、たくさんのロウソクの揺れる炎に照らされた、甘い蜜蝋の香りに満ちた神秘的な空間でした。教会や修道院は大量の蜜蝋と薬としての蜂蜜を必要とし、養蜂の発展に寄与したともいえます。
ウィーンのシュテファン大聖堂に面したロウソク屋では、洗礼などの宗教儀礼の折に灯される端正なロウソクに加えて、昔ながらの型で作られた無骨な蜜蝋のロウソクや蝋細工が並んでいます。店の中には、ロウソクと蜂蜜入りの菓子の甘い香りが漂っています。ロウソクと菓子を同じ店で売っているのは奇妙ですが、中世の昔から、同一の職人が、ミツバチの恵みである蜂蜜と蜜蝋を加工する権利を与えられていました。現在の職業教育でも、蜂蜜菓子作りと蜜蝋のロウソクを作る技能はセットで習得されます。
ミツバチの神秘的な営みに魅了された人々と、かれらが生み出したアート、ミツバチの不思議と恵みについてのレジュメをPDFファイルとして本ページ上部に添付しました。 スロベニアの巣箱に施される土俗的なアート、東部ドイツ地域で多く作られた人間の彫像の巣箱、藁紐で作った巣籠、蜂蜜入りの飾り菓子、蜜蝋細工の奉納品やクリスマスの飾りなど、ミツバチのもたらす恵みが民間信仰と結びついて生み出されたさまざまな民俗文化は、ミツバチと人間の深い繋がりを感じさせます。
１９世紀のドイツでの養蜂をコミカルに描いたヴィルヘルム・ブッシュの絵物語「ぶんぶんミツバチ」も、翻訳しました。 ヴィルヘルム・ブッシュ作 「ぶんぶんミツバチ」第二話 （ドイツ語）がのっているサイト Wilhelm Busch: Schnurrdiburr oder die Bienen
トルコの深い森で素朴な養蜂を営む家族を撮った映画、「蜂蜜」（２０１０年ベルリン国際映画祭、金熊賞） 自然の奏でる音と、声を潜めた少ない会話だけの静かな映画は、遠い昔、蜂蜜は森の神秘的な恵みであったことを思い起こさせます。 映画「蜂蜜」公式サイト Semih Kaplanoğlu “Bal-Honig” http://www.alcine-terran.com/honey/trailer.html
ミツバチが出す音と、養蜂に用いる道具の音だけから作られた珍しい音楽、オーストリアの音楽グループ “Team Tool Time” が、養蜂の現場で採集した音をコラージュした “Bee Pop” というＣＤが、2013年リリースされました。 録音現場の様子を撮影した ” Making of Bee Pop” という映像を見ると、協力している養蜂家は、ウィーンのオペラ座の屋根の上でミツバチを飼育している知り合いでした。オーストリアは狭いなあと感じたと同時に、ミツバチと人との交流が現在でも脈々と続いていることを、再認識しました。 ” Making of Bee Pop”が見られるサイト： http://www.pauldivjak.com/bee-pop-making-of/
今、自然環境保護の意識の高まりと共に、ミツバチが注目されています。ミツバチの大量死や失踪が各国で報告され、アインシュタインの言葉、「ミツバチが消えてしまったら、その後４年しか人間は生きられない。」が、現実味を帯びてきました。古来綿々とミツバチに注がれてきた思いを引き継いでいる人々の営みから、自然との付き合いかたを学んだ気がします。
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スロベニア 巣箱の出入り口の板絵 スロベニア 蜂蜜菓子 オーストリア 蜂蜜飾り菓子 |
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チロル 蜂の巣を太陽で融かして蜜蝋をとる 蜜蝋で作った養蜂の守護聖人像 ドイツ 木の幹からできた人間型巣箱 |
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スロベニア 蜂蜜入装飾菓子 木の幹から作られた巣箱の頭部 スロベニア 蜂の巣籠のモチーフの壁面装飾
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