くるみ割り人形  フォークアート

くるみ割り人形の物語と木工芸レジュメpdf_icon      絵本の挿絵と木製のくるみ割りpdf_icon

 

Lisbeth Zwergerの絵本と、エルツ山地で

旧東独時代に作られた軽騎兵のクルミ割り

トウヒやブナの角材は約130の行程をへて、背丈35cmほどの

くるみ割り人形に生まれ変わる。家内工業として発展してきた

 

 

くるみ割り人形の歴史は、ほとんどわかっていません。19世紀後半から20世紀前半に作られた人形を見ると、色は剥げ落ち、傷だらけだったりします。子供が不器用にクルミを割って遊ぶおもちゃだったことがわかります。子供たちは、この人形が大好きで、手放さずに持ち歩いていたのではないでしょうか。壊れて捨てられる物も多かったはずです。

 

てこの原理を応用したくるみ割り人形は、中欧のあちこちで作られていましたが、18世紀末、ドイツ東部に位置するエルツ山地地方 (Erzgebirge) で、くるみ割り人形の原型となる造形が生まれました。 エルツ山地は、中欧を代表する銀や亜鉛の産地として栄えていました。鉱山業の衰退に伴い、余暇に子どものために作っていた「木の細工物」で生計をたてる人が増え、次第に木工芸が盛んとなりました。零細な家内工業として発展したため、くるみ割り人形の造形も、作り手ごとに特徴のある個性豊かなものでした。現在は、効率よく多くの製品を作ることも可能となりましたが、小さな工房で手作りの伝統を守っている工人もいます。

 

エルツ山地のヒュフトナー家の仕事場のビデオ (ARD、ドイツの公共放送局の子供向け教育番組)

http://www.ardmediathek.de/tv/Die-Sendung-mit-der-Maus/Die-Sendung-mit-der-Maus-18-12-2011-Nu/Das-Erste/Video-Podcast?documentId=9068742&bcastId=1458&mpage=page.download

 

チャイコフスキーのバレエ作品「くるみ割り人形」では、凛々しい王子に変身したくるみ割り人形が印象的ですが、その原作、1816年にドイツの作家、E.T.A.ホフマンが発表した「くるみ割り人形とねずみの王様」は、どのような話なのでしょう。クリスマスプレゼントのくるみ割り人形が、真夜中に現れたネズミの大群と戦う場面はバレエ作品と同じですが、その後の展開は昔話と現実が交錯する複雑怪奇な物語です。呪いにかけられて「醜いくるみ割り人形」に変身した若者と、七つ頭のおぞましいネズミの王の因縁の戦いに、多感な少女が絡みます。

E.T.A.ホフマンが発表した「くるみ割り人形とねずみの王様」のあらすじpdf_icon

 

バンベルク国立図書館のデジタルデータ : 1840年の絵本の挿絵 ペーター・パウル・ガイスラー画 (Peter Carl Geissler)

http://digital.bib-bvb.de/view/bvbmets/viewer.0.5.jsp?folder_id=0&dvs=1411871378402~150&pid=2799277&locale=ja&usePid1=true&usePid2=true  (ヴェブページのhere をクリックする)

 

他にも、くるみ割り人形が登場するドイツ語の物語はいくつかあります。

「もじゃもじゃ頭のペーター (Struwwelpeter)」の作者、ハインリッヒ・ホフマン (Heinrich Hoffmann) 1851年に発表した「くるみ割りの王様と、かわいそうなラインホルト (König Nußknacker und der arme Reinhold)」には、次から次へと登場するエルツ山地のおもちゃの頂点に君臨する、王様のくるみ割りが描かれています。19世紀、この人形がいかに子供にとって身近なものだったかがよくわかります。

 

ハインリッヒ・ホフマン作 絵本と詩「くるみ割りの王様と、かわいそうなラインホルト」 (ドイツ語) 

http://www.gutenberg.org/files/32034/32034-h/32034-h.htm

 

 

1840年の本の挿絵 Peter Carl Geissler

ねずみとの戦いで指揮をとる「くるみ割り人形」

風刺画1813年 ナポレオンの人形も作られた

Heinrich Hoffmann 1851

くるみ割りの王様が登場する絵本

 

 

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