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Muhr Prangstangen ムーアの花柱祭 初夏のアルプス山麓では、花に彩られた祭礼が見られます。以前は広く行われていた花祭りですが、現在ではザルツブルク州のムーア川源流にある人口580人の山村ムーアMuhrと、その近くのツェダーハウスZederhausに残るだけとなりました。もともと土着の民間信仰で、麦の収穫前の夏至の頃、天候が荒れたり虫の害が増えるのを防ぐために、若枝や花を掲げて畑地をめぐり、実りつつある作物への祝福を祈願する行事でした。現在では、キリスト教の聖体祭と一緒に行われます。聖体とされるパンを入れた顕示台を恭しく掲げた司祭を中心に、民俗衣装の村人が練り歩きます。その行列の露払いは、6〜8メートルもある巨大な数本の花の柱です。アルムで集めた5万個近くの花で紐を結い、柱に巻き付けて模様を作りますが、美しい柱を奉納するためには、祭の寸前に仕上げなければなりません。村人総出の作業となります。花柱の一番下の層には、白いマーガレットが巻いてあります。中世、イナゴの大群に襲われたとき、マーガレットの花だけが残ったという故事から、厄除けのシンボルとなったからです。宗教改革に対抗して、人々の心を聖体拝受を重んじるカトリック信仰に向けさせようと、教会によって推進された華やかな祭のひとつで、300年の伝統をもつといわれています。ムーアでは、花柱の巡行が終わると、身長5メートルの巨大なサムソン人形が登場し、音楽にあわせてワルツを踊ります。75キロもある人形を一人で背負って踊るのは、80キロの巨大な花柱を掲げて歩くのと同様、力自慢を披露する神事を思わせます。 |
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Lofer Kräuterweihe ローファーの薬草の花束 8月15日のマリア昇天祭も花に彩られた行事です。牧畜を営む所ではアルムで集めた野草から花束を作ります。ローファーLoferの町があるザルツブルク州のドイツ国境に近い地域の花束は、一抱えもあり特に見事です。神々に捧げられた花束が病気を治し豊穣をもたらすとされた古代の信仰にルーツを持つ習俗です。キリスト教は8世紀、異教の習わしだとしてこの慣習を禁じましたが、のちに花と深い関係をもつマリアの祭日の行事として取りいれ、マリア昇天祭のミサで、祭壇の前に並べられた花束を浄めるようになりました。祝福を受けた花束は乾かされ、年末年始に家や家畜小屋を燻して浄めるときに使われます。家畜や人を病気や災厄から守る力があると今でも信じられ、ハーブティーなどの食用にも供されています。 |
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